無痛分娩について

 本HPは、無痛分娩関係学会・団体連絡協議会の勧告する無痛分娩施行施設情報公開基準にしたがい医療法人岩国病院で行う無痛分娩についてお知らせするものです。

 1) 岩国病院の無痛分娩

 当院では、現在世界で無痛分娩のスタンダードとなっている持続硬膜外麻酔と陰部神経麻酔を中心とした無痛分娩をおこないます。
 無痛分娩をするために分娩誘発を行うことはいたしません。また原則として分娩入院予約の時無痛分娩予約を済ませてください。時にできるだけがまんして最後の場面で無痛分娩を希望される方がありますが、硬膜外麻酔による無痛分娩には準備と麻酔効果が現れるのに一定の時間が必要なため間に合わないことがあるからです。
 持続硬膜外麻酔は、分娩のはじめから必要なら数日間まで麻酔効果を続ける事ができます。陰部神経麻酔は娩出期の出口の痛みを抑えることができます。したがってその両者を組み合わせることでより満足いただける無痛分娩となります。

1 硬膜外麻酔・陰部神経麻酔主体の無痛分娩は、局所麻酔だからベビーに麻酔作用がおよばず児にとってもっとも安全な麻酔です。

2 持続麻酔中は、心肺モニターで監視するなどにより通常の分娩より安全性の高いお産となります。

3 産痛による疲労が少ないため落ち着いてお産することができます。

4 痛みによるパニック、妊娠高血圧、帝王切開術後経膣分娩、骨盤位分娩などむずかしい分娩のケースでもスムーズなお産をすることができる場合があります。

5 局所麻酔による無痛分娩には、普通分娩の際の会陰裂傷縫合のような小手術の麻酔と同様にいくつかのリスクがあります。局所麻酔剤中毒、高位麻酔とアナフィラキシーショックです。

6 局所麻酔剤中毒、高位麻酔を避けるには正確な手技が大切なのは勿論ですが、吸引や少量の局所麻酔剤の投与などのテストをかならず実施しますので大事にいたることはあり
ません。

7 アナフィラキシーショックは通常のお産の際の会陰縫合や会陰切開時の局所麻酔剤でも起こることで現在の医療では、予測することは難しいです。アナフィラキシーショックは少量の局所麻酔剤でのテストでも起こるのでテストをすれば安心とも言えません。ただ当院では数万例の経験で局麻剤によるアナフィラキシーショックは起きたことはないくらい稀なものです。そのような万一の場合でも必ず心肺モニターで観察し、決められた手順での対応など適切な処置をおこないます。

 持続硬膜外麻酔の実際

1 麻酔の効果が現われるのに30分程度はかかるので早めに始めるほうが良いです。
2 ベッド上で横向きに寝ます。
3 身体を丸めて、顔はお臍を見るようにしてください。
  両膝をお腹につけるようにしてネコのように丸くなります。
  背骨と背骨の間を広げるように意識してください。
4 看護師が身体を抱え支えます。
5 背中を消毒します。
6 硬膜外麻酔針を刺すために痛み止めを注射します。
7 硬膜外麻酔針を刺しチューブを挿入します。
8 テストの局所麻酔剤を少量注入し5分から10分間異常反応がないか観察をします。
9 麻酔は身体の低い部分に効きますので麻酔薬注入後は10分以上上向きのまま待ちます。
10 麻酔が効いてくると太ももやお尻のあたりがだんだん温かく感じたりしびれたりします。
11 心肺モニター、特に血圧は頻回に測定します。
12 当院では麻酔薬は安全のため「自動注入」や「セルフ注入」ではなく反応や効き目を見ながら最小限量を看護師、医師が注入します。

 2) 無痛分娩を行う体制

a. 勤務医師数
  常勤勤務医数  1
  非常勤医師  10

b. 分娩取扱実績
 15年以上の経験が有り、平成24年以降だけで353例に施行しました。

 2017年1月から12月までの実績
分娩数  292
非無痛経膣分娩件数   177
無痛分娩件数   79
帝王切開分娩件数  36

c. 無痛分娩に関する対応方針とマニュアル整備状況
妊婦さんご本人の希望のみを適応としています。
原則として自然陣痛を無痛分娩の対象としそのために計画分娩を行うことはしません。
実施している鎮痛法は持続硬膜外麻酔を中心とし、陰部神経麻酔を補助にしています。
無痛分娩説明文書
無痛分娩同意書
麻酔マニュアル
無痛分娩看護マニュアル
は別紙の通りです。

d. 無痛分娩に関する設備及び医療機器の配備
麻酔器 有り
AED 有り
母体用生体モニター 有り
蘇生用設備機器 無痛分娩関係学会・団体連絡協議会の指定するもの完備
緊急対応薬剤 無痛分娩関係学会・団体連絡協議会の指定するもの完備
e. 急変時の体制
母体の救急蘇生
対応する医師
 産婦人科医師 常勤・非常勤
 内科医師 常勤・非常勤
 麻酔医 非常勤
新生児の救急蘇生
 産婦人科医師 常勤・非常勤
 麻酔医師 非常勤
新生児蘇生法講習会参加
 助産師 2名
 看護師 2名
重症母体搬送先
 国立岩国医療センター
搬送方法
 救急車搬送
重症新生児搬送先
 国立岩国医療センター
搬送方法
 救急車搬送
無痛分娩麻酔管理者
 庄司孝 日本産婦人科学会認定産婦人科専門医
 岡山大学麻酔科研修
 岡山大学産婦人科麻酔研修
無痛分娩実施歴
 平成24年以降 353例
日本産婦人科医会偶発事例報告・妊産婦死亡報告事業への参加
 偶発事例・死亡事例なし
ウエブサイトの更新日時
 2019.3.13

麻酔マニュアル

麻酔
 麻酔の基礎は挿管全麻
 特に挿管は救急手技として必須
 ビデオ喉頭鏡は誰でもできるので自分の好みのものを用意するのが良い。

脊椎麻酔
* 0.5 % Marcain脊麻用 高比重 4 ml
開腹手術 0.5 % Marcain 3 ml+Fentanyl 25 μg 0.5 ml
帝王切開 0.5 % Marcain 2 ml+Fentanyl 25 μg 0.5 ml

硬膜外麻酔
* single 17 G 硬膜外直針
生食を使用しloss of resistance法で硬膜外腔に達すると麻酔薬を注入する。

* continuous 17 G 硬膜外曲針
生食を使用しloss of resistance法で硬膜外腔に達するとチューブを挿入する。肥満妊婦では、座位の方が硬膜外穿刺がやり易い。皮下と棘間靭帯の軽度の抵抗は一気に押し進め、黄靭帯にドスンと突き当てる。そこからは生食をプッシュして硬膜外腔に入っていないことを確かめながら慎重に硬膜外針を少しずつ進める。抵抗の無いフリーな腔に達した感じがあり髄液の逆流がなく、抵抗なく生食が入るようであればそれ以上硬膜外針を進めない。硬膜外腔は1.0 cm程度しか無いのでそれ以上進めるとクモ膜を破ることになる。生食10 ml程度を注入し硬膜外腔を充分広げるとチューブが入れ易く、チューブ挿入による血管損傷も防げる。チューブは1.0 cm以上、できれば5.0 cm 挿入する。チューブを絆創膏固定する際にはループをつくると体動による脱落を防げる。
 どうしてもチューブが挿入できない時は、硬膜外針をわずかに進めてみたり、べーベルの向きを変えてみたりすると入ることがある。尾側に向けたら入ったことがある。低濃度、少量の局麻剤を注入してテストする。クモ膜下や血管内に薬液が入ると直ちに反応が起きるので、10 分経って何もなければ麻酔を開始してよい。
 くも膜穿刺となったら1分節以上離してやりなおす。その時は麻酔が効き過ぎることがあるので局麻剤は少量で慎重にテストする。
 硬膜外チューブの抜去
 硬膜外チューブの抜去は静かに抜き必ずチューブの末端まであるか確認をする。術後などヘパリンを投与していたら、ヘパリン投与直後の抜去や抜去直後のヘパリン投与は避ける。

合併症
* 麻酔効果不足
脊椎麻酔、硬膜外麻酔とも低い方側が効く。頭側を下げれば上、尾側を下げれば下、側臥位にすると片効となる。
* 低血圧
輸液強化
下肢挙上
子宮左側圧排
* ショック
ネオシネジン
カコージン
デカドロン
* 呼吸停止
マウスツーマウス
アンビューバック
挿管
* 心停止
閉胸式心マッサージ
* 不穏興奮痙攣
セルシン5 ml静注
* PSH(脊麻後頭痛)
硬膜外blood patch(硬膜外腔に本人の血液10-20 ml注入)

無痛分娩レシピ
1.0 % Anapeine 5.0 ml
Fentanyl 100 μg 2.0 ml
生食18 ml

脊椎麻酔のリスク
a. 低血圧ショック
 ほとんど必発と考えてあらかじめルートをとりネオシネジン等を分割静注する。
 アナフィラキシーショックは極めて希だが同様に昇圧剤を注入する。
b. 高位麻酔
 高比重マーカインの方が低比重より安全。
 L2−3より上では注入しない。
 過度に頭側を下げない。
 局麻剤は必要最小限にとどめる。
 呼吸停止には挿管補助呼吸

硬膜外麻酔のリスク
 a. 低血圧ショックは脊椎麻酔より起きにくく程度も軽い。
 b. loss of resistance法で硬膜外腔に達したらそれ以上絶対に針を進めない。
 loss of resistance法で硬膜外腔に達したら生食10 mlを注入しチューブ挿入のスペースを確保する。
 c. 必ず吸引テストし血液、髄液の逆流がないことを確かめる。
 d. 少量の局麻剤を注入し5
10 分観察し、早期の麻酔発現がないか、局麻剤中毒症状、徐脈、メタル味、不穏など無いか確認する。
 e. くも膜穿刺となり気づかず局麻剤を注入したら高位麻酔、全脊麻となり呼吸停止が起きるので挿管補助呼吸を行う。
 f. アナフィラキシーショックは極めて希だが対処法は脊椎麻酔の時と同じ。

無痛分娩同意書

 当院では持続硬膜外麻酔と陰部神経麻酔を中心とした無痛分娩をおこないます。
 持続硬膜外麻酔は、分娩のはじめから必要なら数日間まで麻酔効果を続ける事ができます。陰部神経麻酔は娩出期の出口の痛みを抑えることができます。したがってその両者を組み合わせることでより満足いただける無痛分娩となります。

1 硬膜外麻酔・陰部神経麻酔主体の無痛分娩は、局所麻酔だからベビーに麻酔作用がおよばず児にとってもっとも安全な麻酔です。

2 持続麻酔中は、心肺モニターで監視するなど通常の分娩より安全性の高いお産となります。

3 産痛による疲労が少ないため落ち着いてお産することができます。

4 痛みによるパニック、妊娠高血圧、帝王切開術後経膣分娩、骨盤位分娩などむずかしい分娩のケースでもスムーズなお産をすることができる場合があります。

5 局所麻酔による無痛分娩には、普通分娩の際の会陰裂傷縫合のような小手術の麻酔と同様にいくつかのリスクがあります。局所麻酔剤中毒、高位麻酔とアナフィラキシーショックです。

6 局所麻酔剤中毒、高位麻酔を避けるには正確な手技が大切なのは勿論ですが、吸引や少量の局所麻酔剤の投与などのテストをかならず実施しますので大事にいたることはありません。

7 アナフィラキシーショックは通常のお産の際の会陰縫合や会陰切開時の局所麻酔剤でも起こることで現在の医療では、予測することは難しいです。アナフィラキシーショックは少量の局所麻酔剤でのテストでも起こるのでテストをすれば安心とも言えません。ただ当院では数万例の経験で局麻剤によるアナフィラキシーショックは起きたことはないくらい稀なものです。そのような場合でも必ず心肺モニターで観察し、決められた手順での対応など適切な処置をおこないます。

 持続硬膜外麻酔の実際

1 麻酔の効果が現われるのに30分程度はかかるので早めに始めるほうが良いです。
2 ベット上で横向きに寝ます。
3 身体を丸めて顔はお臍を見るようにしてください。
  両膝をお腹につけるようにしてネコのように丸くなります。
  背骨と背骨の間を広げるように意識してください。
4 看護師が身体を抱え支えます。
5 背中を消毒します。
6 硬膜外麻酔針を刺すために痛み止めを注射します。
7 硬膜外麻酔針を刺しチューブを挿入します。
8 テストの局所麻酔剤を少量注入し5分から10分間異常反応がないか観察をします。
9 麻酔は身体の低い部分に効きますので麻酔薬注入後は10分以上上向きのまま待ちます。
10 麻酔が効いてくると太ももやお尻のあたりがだんだん温かく感じたりしびれたりします。
11 心肺モニター、特に血圧は頻回に測定します。
12 当院では麻酔薬は安全のため「自動注入」や「セルフ注入」ではなく反応や効き目を見ながら最小限量を看護師、医師が注入します。

 以上のような説明を聞き理解しましたので無痛分娩を希望します。

 年月日:

 本人氏名:
 
 配偶者または親族氏名:

無痛分娩看護マニュアル

本看護マニュアルはローリスク妊婦を対象とした標準的な無痛分娩に対するものである
1. 妊娠中の看護
2. 入院時
3. 無痛分娩当日
4. バースレビューの実施

1.妊娠中の看護
妊娠後期には無痛分娩のオリエンテーションを必要に応じて個別に行う
妊婦の希望に合わせて意思決定が行えるように支援する

施行術前検査の確認
2.入院時
母児の情報収集(既往歴、家族歴、服用薬、アレルギー等、妊娠経過)とリスクの評価を行う
無痛分娩説明の理解度を確認し、産婦の疑問や不安の解消に努める
説明と同意書の有無、署名の確認を行う
分娩中の管理(点滴、内服薬、モニター、注意点等)について産科医、麻酔科医から指示を受ける
胎児心拍数陣痛図(CTG)を装着し、児の状態の観察、陣痛の程度を観察する異常があれば医師に連絡する
3.無痛分娩当日
1) 準備
細胞外液、膠質液の確認
保冷庫の温度点検
分娩室エリア 救急蘇生カートの点検
分娩室器械作動点検(分娩台、吸引器、麻酔器、モニター類)
新生児蘇生器の点検、作動点検
救急薬ボックスの物品点検
分娩待機室・分娩室のベッドサイドに、酸素マスク、ナースコール、ベッド柵の準備
2)情報共有
分娩に関する始業前多職種ブリーフィングの実施
3) 分娩進行中の管理と記録
分娩進行時は、原則常に母体生体情報モニター、CTGを装着し母児が健康であることを確認する
産婦の体温(2時間毎)、血圧(1時間毎)、心拍数(2時間毎)、SpO2(2時間毎)、呼吸数(適宜)等適宜記録する
CTGモニターは紙ベースで保存する.以下㈪〜㉀の症状や投薬、医師の行なった処置、患者への説明内容等はパルトグラムに記録する
異常出現時、または異常が疑われる場合は分娩担当産科医師または麻酔科医師に報告する
無痛分娩開始前に産婦の体温、血圧、心拍数、SpO2、呼吸数を確認する
適宜Bishop scoreを確認する
無痛分娩開始前に、18Gで末梢静脈ルートを確保し輸液を開始する
陣痛の痛みの程度をVASで評価し,麻酔開始の産婦の希望を確認する
麻酔導入へ産科医の了解を得た後麻酔分娩開始する
4) 麻酔導入の介助
ディスポーザブル帽子とマスクを装着
血圧計とSpO2モニターを装着し、血圧、心拍数、SpO2、呼吸数の変動やCTGの異常、陣痛の程度を確認する 血圧計は自動計測2.5分おきに設定
産婦に硬膜外麻酔導入の体勢をとる介助を行う
産婦のカテーテル挿入への恐怖や体位保持への苦痛軽減のため、適宜声掛けを行いスムーズに麻酔導入が終了するよう援助する
穿刺後、カテーテル刺入部位が確認でき、羊水や血液で汚染されないように、透明なドレッシング材で刺入部を覆う 体動でカテーテルが抜けないようにテープを背中にしっかり固定する
5) 麻酔導入後の管理と記録
麻酔導入後,産婦を半側臥位にし、血圧、心拍数、SpO2、呼吸数の監視等の記録と胎児心拍モニタリングを行う
特に麻酔薬投与後の母体低血圧とそれに伴う胎児心拍数の低下に注意する
血圧と心拍数の測定間隔は、導入〜15分:2.5分毎,15〜30分:5分毎,30〜60分:15分毎、60分以降60分毎 血圧低下時は医師へ報告、下肢挙上や保温された細胞外液投与などを指示に従い実施
麻酔導入後、子宮頻収縮の出現とそれに伴う胎児心拍数異常の出現に注意する
抗生剤投与
6) 無痛分娩経過中のケア
血圧、心拍数、SpO2、呼吸数は1時間毎、体温は2時間毎に測定しパルトグラムに記載する
Bromageスケールに沿って運動神経麻痺の状態を2時間毎にチェックしパルトグラムに記載する
軽い半側臥位を保ち2時間毎に体位変換をする 仰臥位は避ける
麻酔により膀胱充満感を感じないことがある 必要なら膀胱充満による分娩遷延予防と排尿障害防止のため、2時間毎に導尿をおこなう
DVTリスクアセスメント評価に従って個々にDVT防止策を行う(足関節運動など)
異常出血や多量の羊水流出、過強陣痛を自覚できないことがあるため、助産師が兆候を把握する
硬膜外カテーテル刺入部の出血・腫脹の有無,カテーテルの抜けやずれの有無を観察する
陣痛の強さ、持続時間、胎位胎向は触診で確認(麻酔不使用時と同様に観察,助産診断する)
分娩時の努責呼吸法の指導
胎児児頭の回旋異常の有無を観察する 回旋異常がある場合は、児頭が回旋し易い産婦の体位を工夫する
産婦に分娩進行状況や実施しているケアを適宜説明しながら、産婦の傍で経過を観察し援助する
7) 分娩時のケア
直接介助者・間接介助者が産婦をベッドから分娩台へ不自然な体位にならないよう留意して移乗介助
血圧計、心拍数、酸素飽和度モニター装着 (自動計測)
インファントウォーマーの確認(聴診器、吸引器、肩枕、サチュレーション等)
分娩介助 努責・呼吸法の誘導.硬膜外麻酔の作用により有効な努責が加えられない可能性がある 産婦を励ましながら努責の方向を誘導する
吸引分娩・鉗子分娩へ移行する可能性を踏まえての準備と分娩介助を行う
8) 分娩後のケア
[分娩室内] 記録は間接介助者がカルテ内の分娩記録に入力する
児の蘇生は新生児蘇生法(NCPR)アルゴリズムに沿って観察・ケアを実施
母体バイタルサインや出血量を確認
分娩時に多量出血でない事、産褥復古状況が良好であること、凝固能に異常がないことを確認の上、帰室時に硬膜外カテーテルを抜去する
抜去カテーテルの末端が切断されていないことを確認する
分娩2時間後を目安に歩行開始していく
[歩行までの確認事項] 記録はカルテ内の検温表に入力する (1〜2時間毎に観察)
産褥復古状況(異常出血の有無、子宮硬度)
膝立て保持の有無
左右下肢の知覚鈍麻の有無
左右足関節底背屈の可否
硬膜外麻酔刺入部の観察
DVTリスクアセスメント評価によるDVT防止策を実施
産後,循環動態の変動により利尿期となる為,定期的な排尿介助(歩行開始までは導尿)
歩行開始時は体温、血圧、心拍数、呼吸数を測定し、転倒に注意しトイレ歩行へ付き添う
産後2時間経過後も下肢の違和感、痺れ、麻痺の有無を確認する
麻酔覚醒と共に,後陣痛や会陰切開部痛を自覚することへの対応 鎮痛薬の処方
[産後尿閉のフローチャート](尿閉が続く場合は,産科医師へ相談)
自然排尿の確認
自然排尿がない場合,4時間を目安に排尿誘導
【排尿測定器で膀胱内用量を測定】
・排尿150ml以上かつ残尿感がある場合
・排尿なし または 排尿150ml未満の場合
その後、膀胱内用量100ml以上で導尿実施し、4時間以内に再度排尿誘導
膀胱内用量100ml未満の場合は、4時間おきに排尿誘導
自尿なく残尿100ml以上ある場合は、自己導尿を導入
100ml未満はフォロー中止
4. バースレビューの実施
出産を終えた女性が、自己の出産体験を表現することを助けるため、出産体験を十分に傾聴し受け止める 
産褥2日目頃に出産に立ち会った助産師・看護師が行う

救急蘇生法マニュアル

救急蘇生法

1. 目的
呼吸、循環の機能の著しい低下は生命の維持を危うくするため、何らかの方法を用いて呼吸、循環を補い生命を救う。

2.必要物品
  救急カート
  ・気道確保用具—エアウェイ・舌圧子・舌鉗子・開口器
  ・気管内挿管—喉頭鏡・気管内チューブ・スタイレット・バイトブロック・キシロカ
インゼリー・5cc注射器・固定用テープ・吸引用カテーテル
  ・アンビューバック・酸素マスク・酸素カニューレ・高濃度酸素マスク
  ・注射用品—各サイズディスポ注射器・注射針・留置針・翼状針・カテラン針・輸液
セット・三方活栓・延長チューブ・駆血帯・アルコール綿
  ・診察用品—ペンライト・聴診器
  ・各サイズバルンカテーテル・バルンバック・導尿用カテーテル
  ・心電図モニター・除細動器・中央配管セット・吸引器セット

3.手順
  A(Airway):気道確保          
  B(Breathing):人工呼吸
  C(Circulation):循環確保
  D(Defibrillation):除細動(AED)

患者の意識がない状態を発見したらナースコールを押すか、大きな声を出して人を呼ぶ。
呼吸の確認を行い、気道確保の体位をとる。
循環サインを確認し心肺停止状態であればまず、前胸部叩打法を行い、心臓マッサージを行う。
呼吸停止状態であれば気管挿管を行い、人工呼吸を行う。
心臓マッサージを行っても心拍がない時、Vf、Vtの時は除細動器を使用し、カウンターショックを行う。

1) 気道確保方法
1 低い枕かバスタオルを使用し肩枕を挿入する。
2 義歯があれば除去し、吸引器を使用し痰や唾液を吸引する。
3 頚部を伸展させ下顎を上げ、頭部を後屈し、頭部後屈顎先挙上の体位をとらせる。
4 必要であれば、自発呼吸があるが意識のない患者には口腔エアウェイを挿入し、挿入が困難であれば鼻腔エアウェイを挿入する。

2) 人工呼吸法
1 気道を確保しても胸郭の動きがない場合、アンビューバックを使用し人工呼吸を行う。
2 アンビューバックに酸素をつなぐ。
3 マスクの狭い方鼻側にし、鼻と口を完全に覆うように顔面に密着させるように固定する。(頬部がへこみ空気が漏れる時はガーゼを挟み空気が漏れないよう
にする)
4 左手の第1指と2指でマスクを押さえ、残りの3本で下顎を挙上させる。
5 術者の腰部を患者の頭部に押しつけるようにし、右手でバックを押す。
6 胸郭の動きを見ながら1分間に10〜12回位の換気を行う。

3) 心臓マッサージ方法 
1 前胸部叩打法3回施行、握り拳で20〜30cmの高さから胸骨の下1/3部を強く叩打する。
2 患者を上向き水平にして、背面に固い板を挿入する。(詰所、物品庫の前にあり)
3 肘を伸ばし、脊柱に向かって体重をかけて胸骨を3〜5cm押し下げる。毎分
80〜100回の速さで行い、手を胸骨から離さずに速やかに力を緩める。

4) 心臓マッサージと人工呼吸の組み合わせ
1 最初にアンビューバックで2回空気を吹き込み、脈拍の有無を確認する。
2 脈拍がなければ、直ちに「1、2、3、4、5」と声を出しながら心臓マッサージを30回行う。
3 気道を確保し、人工呼吸を胸郭の動きを見ながら2回行い再び心臓マッサージを30回行い、以降これを繰り返す。
4 心臓マッサージ開始後、1分以内に脈拍の確認を行い、その後は数分ごとに1回確認を行う。

5) 除細動器(カウンターショック)
1 心臓マッサージを行っても心拍がない時、Vf、Vtの時心臓マッサージを行いながら除細動器を準備する。
2 意識が清明または軽度意識障害のある場合は鎮静を行う。
3 除細動器の出力を(200−300−360−400joules)に設定する。
4 電極(パドル)の確認をし、電極と皮膚の間にペーストを塗布するか、生食に浸したガーゼを置く。
5 患者の手足などがベッドの金属部分に触れていないか確認する。
6 施行者以外は全員ベッドから離れる。
7 施行者はゴム手袋を着用し、電極を患者の前胸部に装着する。
(R=胸骨右縁2〜3肋間  L=右前腋窩線と第5肋間の交点)
8 通電時には必ず声をかける。
9 充電が完了後パドルボタンを押し、必要に応じて何度も繰り返す。
10 モニターで心電図波形を確認し、不整脈が改善したかを確認する。
11 バイタルサインの確認を行う。
※除細動は別マニュアルあり。AED外来にあり。

4.注意事項
  1)気道確保
   a. エアウェイを使用する場合は大きさのあった物を使用する。大きさが合わないと、逆に舌を押しこむ事になるので注意する。
   b. エアウェイが挿入された状態では嚥下運動が抑制され、分泌物、吐物などが気道に入りやすくなるため吸引を頻回に行う。

  2)人工呼吸
   a. 気道閉塞がないか確認し、異物はしっかり除去する。
   b. マスクと頬部としっかり密着させ空気が漏れないようにする。

  3)心臓マッサージ
   a. 柔らかいマットなどの上では効果的なマッサージが行えないので背部に固い板をしきこむ。
   b. 腕の力で胸骨を押すのではなく、上半身の力を利用して胸骨を垂直に押す。
   c. 圧迫点の位置が高すぎると肋骨骨折、血腫、気胸が起こる危険性があり、低すぎると剣上突起による上腹部の内臓破裂や胃内容物の逆流などが起こるので注意する。

  4)心臓マッサージと人工呼吸の組み合わせ
2.1 吹き込みは胸の膨らみを見ながら静かに大きく連続して2回行う。
・脈拍の確認は5秒を超えないようにする。

5)除細動器  
   ・感電しないように患者、ベッドに触れないように注意する。

  ※蘇生を必要とする徴候
   ・意識消失、痙攣
   ・呼吸抑制、呼吸停止
   ・不整脈、心室細動、著明な除脈
   ・血圧測定不能、心音聴取不能
   ・著明なチアノーゼ
   
  以上の状態を発見したら「急変時対応マニュアル」に沿った対応、処置を行い状況に応じて、救急蘇生法を行う。

救急救命処置

a. 救急時には、なるべく多くの人員を集める。特に深夜など勤務者が少ない時には、歩ける入院患者さんの協力もお願いしたりすることも考慮する。他の業務中の職員は、できるだけすべての業務を中止して救命処置に集中する。
b. その場に救急器材が無ければ、心停止または心停止の疑いのある場合は、直ちに閉胸式心マッサージを開始する。続いて口の吐物、分泌物を拭い、マウストゥマウスで肺に充分な酸素を送り込む。
独りの場合は、4回心マッサージ(一分間60回のスピード)、人工呼吸一回のリズムで行う。二人になったら手分けして心マッサージ一分間60回、人工呼吸は一分間15回で続ける。心マッサージは独りで続けることは困難なのでできるだけ複数で施行する。素早く電解質、5%糖などでルートを確保する。決して何の輸液にしようかなどと迷って時間を無駄にしてはならない。
吸引器、AED、アンビューバッグ、血圧・脈拍・酸素飽和度モニター、酸素等器材が到着したら順次それらを利用する。AEDを使用するときには他の人の心電図が混入するのを防ぐために全員患者から離れる。それ以後はAEDの音声による指示に従う。麻酔器やレスピレータ、心肺モニターが使えれば大分人手が節約できるが、指揮者の指示で記録者を指名し症状、処置等の内容や時間を記録すること。
c. 救急器材、救急薬品、輸血手配、高次医療機関への搬送手順などは日頃からイメージトレーニングを繰り返し確認しておく。
d. 以上がそれまで元気であった人の急変時の救命処置であるが、悪性疾患末期、老衰などのアクシデントの場合でもシミュレーションと考えて手順を確認の意味でも救命処置を最大限行う。