分娩
浣腸──刺激による陣痛強化と便による赤ちゃんの汚染を防ぐ目的でなるべく早く行います。
剃毛──清潔のため行うところもありますが当院では普通行いません。帝王切開の場合も術野の清潔目的では原則行いません。
分娩室、分娩スタイル──分娩室で座位分娩、仰臥位が原則です。
希望によっては「畳の間」での自由度の大きいお産も可能です。希望によってはレイバーボールも使用可能です。
音楽──好みのCDやヒーリングミュージックを聞きながらの分娩をおすすめします。
自分の毛布や写真持参可能です。
陣痛中は歩行や自由な体位でリラックスしてください。
陣痛時──軽食や水分摂取可です。帝王切開になった場合、お腹がいっぱいだと腰椎麻酔や硬膜外麻酔は可能ですが、全身麻酔は不可能な場合があります。
点滴による血管確保──万一の大出血事故にそなえて血管確保はおこなうのを原則としています。
胎児心拍モニター──赤ちゃんの安全のためなるべく頻回におこないます。
会陰切開──原則行いません。放置すると過大な裂傷が起きる危険が迫った場合は施行します。
夫や家族の立会い分娩──「チャレンジング・デリバリー」のたいせつな要素であり立ち会われることをおすすめしています。
吸引分娩、鉗子分娩、骨盤位検出術──いずれも「チャレンジング・デリバリー」が第一選択であり自然分娩をめざします。児に危険が迫った時には医師の判断でご本人たちと相談の上、最小限の処置をおこないます。鉗子分娩は止むを得ない時のみですが、強力な吸引分娩より鉗子分娩の方が児のリスクが少ないと考えています。
帝王切開──もちろん「チャレンジング・デリバリー」が原則ですが医学的必要やむを得ない場合、腰椎麻酔下を原則としています。ベビーへの影響がない点で、全身麻酔より腰椎麻酔や硬膜外麻酔が良いと考えています。その場合も家族の同伴をおすすめします。ヒーリングミュージックも分娩時と同様可能です。出生後早期のベビータッチなども自然分娩時とほぼ同様です。授乳は出生後、お部屋に戻ってからとなります。
分娩時には帝王切開時も含めて、写真、ビデオ、録音など自由にされてかまいません。
生まれた赤ちゃんとの触れ合い──出生後早期の赤ちゃんとママとのスキンシップを大切にします。助産師・看護師の援助のもとに行ってください。
痛みの軽減──リラックス法、体位変換、歩行、マッサージ、フィットネスボール、呼吸法、入浴、シャワーなどがあります。
無痛分娩──精神的無痛分娩、全身麻酔、針麻酔、硬膜外麻酔、腰椎麻酔、陰部神経麻酔、などの種類があります。
日本ではまだまだ無痛分娩はそれほど多くはありませんが、だんだん普及しています。当院では欧米特にアメリカ人は硬膜外麻酔をほとんどの人が希望されます。お腹を痛めて産むことが大切という考えが日本で昔からありますが、必ずしも分娩には痛みは必要ではありません。むしろ無痛分娩によってお産がスムーズに進行して「チャレンジング・デリバリー」が容易になるというメリットがあります。アメリカ人の場合、極端に痛みに弱いこともあり、パニックになるところを、硬膜外麻酔で痛みをやわらげると上手にいきむことができるようになり、アクティブな姿勢でお産に向かわれることがよくあります。
分娩の初期から長時間にわたって継続できることやいわゆる「いきみ」を阻害しないため自然分娩が可能な点などが多くの人に硬膜外麻酔が好まれる理由です。胎児や産婦さんの呼吸機能に影響を与えない点は、なにより硬膜外麻酔が分娩麻酔に向いている長所であります。その他でも、かなりの難産でも硬い頚管や軟産道の緊張がとれて分娩の進行が早くなったり吸引分娩、鉗子分娩その他の手技が容易くなったりと言う利点もあります。妊娠高血圧の場合など硬膜外麻酔で産婦さんが落ち着くと血圧も下がって分娩がスムーズになるケースも良く経験することです。持続硬膜外麻酔を続けていると、急に胎児心音が悪化して、緊急帝王切開が必要な時にはそのまま手術が施行されるのも大きなメリットです。
分娩後の大出血は昔も今も産科医がもっとも神経を使うところです。持続硬膜外麻酔をセットしてあると頚管縫合などの出血対策がすばやくスムーズに行われる利点があります。
帝王切開の麻酔は、全身麻酔や脊椎麻酔が一般には好まれますが、胎児に影響のない点から脊椎麻酔が第一選択であります。
陰部神経麻酔は出口部のみの痛みを取りますので、吸引分娩、鉗子分娩や会陰切開時には推奨されます。
以前は手術の傷のなおりが悪い等の理由で会陰切開や裂傷の処置に局所麻酔をしないなどということがありましたが、当院ではご本人が望まれない時以外はなるべく陰部神経麻酔など局所麻酔はしたほうがよいと考えています。
陣痛強化──陣痛強化剤はどうしても必要な時のみに行われます。
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